更新:2006/10/20
作成:2006/07/09
1.旅の始まり・名古屋行き超特急
「ジョジョの奇妙な冒険」で有名な漫画家・荒木飛呂彦先生が名古屋で講演するとの情報を発見。
しかし、新幹線だと往復数万円以上かかる上、早朝からの整理券配布に間に合いそうにないので半ば諦めていた。
講演数日前になって”夜行バスだと安いのでは?”と思い立ち調べると半額以下で行けそう。
早速予約しようとしたがほとんど満席。
探し回ってやっと一社見つけて無事予約。

”ハーヴェスト”に運ばれて名古屋へ(ゴゴゴゴゴ・・・)
丁度始発が動き出す前の名古屋に到着。
ホームには人が疎らで、意外と早朝から整理券の配布に並ぶ人は少ないのかなと安心。
ところが、会場の学校に到着すると既に5,60人の列が出来ていた。

校門から続いている行列
徹夜で並ぶのは禁止されていたようなので、近隣の人々か前日入りした人々だろうか。
中には先日、ユニクロから発売された荒木飛呂彦Tシャツを着ている人もちらほら。
週末名古屋は雨の予報だったが、綺麗に晴れており結構日差しがきつかった。
AM6:40頃、開門し校舎へ移動

門の中にあった案内板
中学校の校舎へ移動すると、学校の机や椅子が懐かしく感じた。
並んでいる人は、若い女性から中年ぐらいの人もいて結構いろんな世代の人がいました。

校舎の廊下に移動した行列
学校の先生らしき人の誘導でしばらくここに座って待つように言われる。
そこで近くに並んでいた人に話しかけられる。
ジョジョのコミックスや携帯ストラップなどを持って来ていて、話の内容からかなりのファンだと思っていたら、
どうやら某有名サイトの管理人さんだった。
”ドド”と文字の入った飴と、ジョジョの内容をまとめた資料を頂いた。

ドド飴
周りをよく見ると作品に登場する弓と矢の”矢”をネックレスにしている人もいた。しかも適当な作りではない感じ。
先ほどの先生が現れて、予想外に人が来たらしく整理券配布はもうしばらく時間がかかるとの事。
校舎の2F,3Fまで列が続いているらしい。
AM8:20ようやく整理券の配布が始まる。

整理券
整理券は前から5番目の中央でなかなかいい位置。
早くから並んだかいがあった。

整理券と一緒にもらった資料
左の一番上に荒木先生の顔写真が
荒木先生の講演は第二部でお昼からなので、第一部を何か受講するつもりだったのだが、朝から何も食べておらずかなりの空腹だったので名古屋駅へ戻って食事を採ることに。
朝の時間帯は開いている店が少なくようやく一軒発見し、名古屋名物の味噌カツを食べました。
まだ時間があるので名古屋駅周辺をブラブラしていたら強烈な日差しで汗だくに。
名古屋駅に涼みに戻ったが、駅ビル内部には椅子などの類が全く無く座れずに疲れてしまった。
12時前に学校へ移動。
2.荒木飛呂彦(漫画家)「漫画家という仕事」
会場の講堂に到着。
整理券があるので並ぶ必要はないのだが、結構な行列が出来ていた。
前の講演の入れ替えに時間がかかることから荒木先生の講演時間が短縮されるとの事で残念でならない。
12:20講堂内部へ
内部は既に照明が落とされており、先ほどの先生が「ケーブルに注意してください」と叫んでいた。
正面スクリーンにはジョジョの奇妙な冒険第一巻表紙が大写しされており、弥が上にも期待が高まる。
この講演では、手話と予備スクリーンに字幕まで表示されるそうだ。
ここまで配慮出来る東海中学生はなかなかやりますな。
12:40頃、荒木先生が登場
収容人数1500人の会場は万雷の拍手!
まずは司会の学生から諸注意・荒木先生の紹介・進行について説明。
生徒と荒木先生との対談形式で進めて行くとの説明で一部から「えーっ!」という声があがる。
荒木先生が中学生・高校生の為にお話をするという事になっており、残念ながらファンからの質問は受け付けられないとの事。
以下、講演の内容です。
メモからの書き起こしなので一字一句正確ではありません。
- 皆さんこんにちは
荒木飛呂彦です
今日、東京から来ました
皆さんにお会い出来てちょっと光栄です
ちょっと、ちょっとと言うかかなり緊張してます
- 一日に会う人間はアシスタントの5人ぐらいなので一生分の人間に会った、そんな感じ
- 芸能人じゃないんで、笑いを取ったりとか、ネタをちょっと言ったりと言うのは全然ありませんので、その辺期待しないで欲しいんですよね。(笑)
- 今年で漫画化生活25年
- 「昔読んでましたよ」「子供の頃ファンでしたよ」とか言われるのは古いと思われてるようでちょっと嫌だったが、最近は嬉しくなってきた
- 講演依頼が来た時、30〜40人位の教室でやると思って「いいっすよ」と気軽にOKして今日来たら凄い事になっていて、話がちょっと違うなみたいな感じ(笑)
-
僕にされる質問No1
「子供の時から漫画好きだったんですか?」
「何歳ぐらいの時から、子供の時から漫画家になりたかったんですか?」
- 僕も何でマンガ書いてるのかなっていうのは
正直言って二十歳ぐらいの時はあんまりよく分からなかったが、30ぐらいになるとちょっと分かってきた
- 両親、一卵性双生児の妹達の話
父は会社勤めで母は専業主婦
子供の頃っていうのは別に内気とかそういうのもなく普通の少年だったと思う
二人の姉妹の仲に入って行けなかった
三人兄弟なんだけどちょっと阻害されてる部分があった
毎日家出してーなー、みたいな
- ちょうどその時、手塚治虫や「巨人の星」など漫画が盛り上がって来た時で漫画に惹きつけられていった
漫画のルネッサンス
手塚治虫先生
ある一方では巨人の星などの傑作がチョー生まれてた
- 漫画だと一人で読める
だから自分で描いてみよう、みたいな
- 父が絵が好きで画集とかあって、どうやってこんな絵とか描いてるんだろうなぁ、と見るのがチョー楽しくなった
その部分で家に帰るのがちょっと楽しくなった
漫画を描くっていう動機っていうのはそういう部分
心が救われるっていうか
もし漫画が無ければ、あのまんまグレて、妹とかコロしてたんじゃないかな(もちろん冗談で笑いながら)
(会場笑)
- ゴーギャンが無人島に絵を描きに行った話しを聞いて、何で絵を描く為に無人島とか行くんだろうとすごく惹きつけられた
- 中学校と高校は進学校
その時にファン第一号みたいなのがいて、すごく褒めてくれた
こいつが面白いって言ってくれるんだったら漫画家になりたいなって思った
- 親には内緒で漫画を描き始めた
- 高校で投稿を始めたが落選
自分で何で落選したのか全然分からない
落選してるから批評とか無いので
- 実家が仙台市で、当時、新幹線とかが無くて、特急で4時間かかる
東京の編集部に何で落選するのか聞かねばならん、と
どういう所が悪いのか、欠点が分かればそれで分かるじゃないかと思って
- お小遣いを貯めたりしたが、受験と重なっていた
とにかく漫画家になりたいんだからなるしかないけど親に認めさせるにはデビューするしかないんだなっていう状況
- さらに、高校生の時に、同じ17歳ぐらいで「キン肉マン」を描いた”ゆでたまご”がデビュー
同じ年なのにデビューしてそれにちょっと焦った
- そうしてると今度は”桂正和”っていうのが、僕より年下なのにデビュー
(会場笑)
- とにかく怒涛の如くデビューし始める、大体同じ世代
北条司「シティーハンター」
こせきこうじ「山下たろーくん」
次原隆二
- 徹夜とかしながら、31ページの短編を描いて東京へ
片道四時間
東京に3時間滞在としても11、12時間ぐらいとかかかちゃう
- 実を言うと、小学館のサンデーに行こうかなと最初思った
(会場笑)
- 小学館のビルの前に行ったら凄くでかくてちょっとびびって
(会場笑)
- 隣の小さい集英社の方に先行こうと
たまたま一人、大学を卒業したばっかりの編集者がいて原稿を見せに行った
- 当時の編集部って言うのはとにかく、すげー怖い
どのぐらい怖いかっていうと、例えば「ドラゴンボール」を描いたトリシマ・・・
(会場笑)
鳥山先生の担当の。(笑)
当時若い鳥嶋さん*って言う人は原稿袋から絵がチラッと見えた瞬間に
「あっ、なんかこの絵、見たくない。この絵見たくないんだよなー」とか言って
「描き直して来てよ」って言うんですよ
(会場笑)
*鳥山明、桂正和の担当で有名な編集者
「Dr.スランプ」(アラレちゃん)では悪役”Dr.マシリト”のモデル
とにかく一ページもめくんないんですよ!
「表紙を見ただけで、とにかく人が見たくなるような絵を描いて来い」とそういう感じで怖い
- (話は戻って新人編集者に)原稿を出した瞬間に「チッ(舌打ち)あー・・・ホワイトが漏れ*てんじゃないかよ」
「それしてねーじゃねーか」ってめくる前に言われた
*ホワイトが漏れてる
インクのはみ出しを消し忘れてる事
徹夜で疲れてるし、仙台から来てちょっとヘトヘトでくらくらして来て段々眠くなってきて
(会場笑)
- (新人編集者は)身長も185ぐらいあってすごいデカくて威圧的
それで読み終わったら「うーん、うーん・・・」とか言って
「ちょっと面白かったかな」とか言って
(会場笑)
- 褒められたが、手塚賞の締め切りが二日ぐらい後に迫ってるからいくつか描き直して来いと言われる
また帰って、さらに徹夜して描き直して持って来た31ページに描いたのがデビュー作「武装ポーカー」*
60ページから80ページ描き直してる
*第20回手塚賞準入選
- 親に「載ったんですけど、少年ジャンプにデビューさせていただきます」と許してもらった
そういういきさつがあって漫画家とさせて頂いた
- でもそれは、只デビューさせてもらったって感じ
- 将来漫画家になりたいとか、思ってたりする人っていたりするんでしょうか?
(ポツポツ手が上がる)
医者とか弁護士は?
そういう人はあんまりいないですか
スポーツ選手は?
いないか
ジャニーズ事務所に入りたい・・・
(会場笑)
そういう人はいない(笑)
- あんまり大多数の人は漫画家になりたいなとかって思ってないみたいなんで
今日は「漫画家になりたくない人の為の漫画の描き方」みたいな
(会場笑)
- 電車の中で漫画を読んでいる人を見て「あ!あの漫画読んでる!」って分かる事ないですか?
新人の頃は「リングにかけろ!」とか「キャプテン翼」とか
鳥山先生は「Dr.スランプ アラレちゃん」でデビューしたばっかの頃で
そういう人たちの漫画って言うのは遠くから見ても分かる
それがないと、プロになれないんだなって思った
- 当時、とりあえずデビューさせてもらったけど、そういうのがなくてどうすりゃいいんだろうか、と
それを考えたのが1980年頃
- この世の中で一番簡単な絵っていうのはどういう絵が一番簡単だなと思います?
(スクリーンにペンを持った手が写され、うぉぉぉぉぉっ!!という歓声と共に拍手)
なんか、描くと思いました?(笑)
- (何も描かれていない真っ白な画面)
美術の時間に「雪の絵です」とか言ったらすごい怒られる
でも漫画だと・・・例えば原爆、ピカとか
「原子爆弾投下されました」「ピカ!」とか
「俺の心の中は虚しいとか」
- これで原稿料貰ったりする人いるんですよ
(会場笑)
固有名詞出すとヤバイか(笑)
(会場笑)
- 例えば真っ暗に塗って、地獄に落ちたとかね
デスノートの最終回*辺り
(会場笑)
*DEATH NOTE page.107 幕
正確には最終回の一話前
冗談ですけど
あれ、ちゃんと原稿料出てるんですよね(笑)
- 今まで見た中で一番簡単な絵っていうのは”バーネット・ニューマン”っていう人の描いた現代絵画で、ただオレンジ色に塗ってあるだけ
ちゃんと芸術家として認められてる
- 「アグネス・マーチン」のこれも白いキャンバス、下地をうったキャンパスの中に鉛筆だけで描いてる
- (スクリーンに黒い点が描かれる)
これ絵だと思う?
これは絵じゃない。
何でかって言うと、誰でも描ける
個性が無いと言うか、僕も描けるし舞台の裏の人も描ける
- 丸にして・・・(某有名なネズミっぽい絵を描く)
(会場笑)
この辺だともう漫画ですよ
ミッ○ーマウスで、こういう公の場で出すと著作権がうるさいんです
(会場笑)
こういうのがね、僕欲しかったんですよ
なんかね究極ですよね
- これとかチョー凄くて(モリゾー&キッコロの絵)
(会場笑)
鳥山先生のデザインだと思ったら違った
(会場笑)
- 誰が見ても分かるっていうか、こういう事っていうのが不思議っていうか凄いっていうか尊敬する所
- ピカソは、いろんな絵を描いてるけどピカソだって分かる
個性があるというか、こういうところに影響を受けてる
- 古典っていうか、死んだ人から真似るのはパクリじゃないと思うんですよね
(会場笑)
- 今仕事している人から盗んでいく、影響を受けるっていうのはパクリだと思ってる
- ゴーギャンが子供の時から凄い好きで、どういう所が好きかって言うと
奥行きがあるのに関わらず、色を色面、エリアで囲んで塗るところ
普通地面って茶色とか草が生えてたら緑なんですけど
ゴーギャンの場合はピンクだったり木が青色だったりする
これの影響っていうのは凄いありまして
- アニメになった時に、アニメーターが「すいません、承太郎、何色なんですか?」って質問されるんです
(会場笑)
「えっ?アニメっていうのは、あ、そうか色が決まってるんだ」って思った
だけど僕にはそういう概念が無くて、その時その時に例えば・・・
(コミックス54巻表紙で使われたピンクのジョルノのイラストがスクリーンに映し出される)
(おぉーっと言う歓声)
これとかはピンクなんですね
こっちのジョルノはブルー
(コミックス63巻表紙で使われた青い服を着たジョルノとトリッシュが背中合わせのイラストがスクリーンに映し出される)
例えばこれだとピンクの周りに水色
(先ほどのコミックス54巻表紙で使われたイラスト)
ただピンクに塗るより、パワーが凄い発揮される
そういうところが80年代にちょっと影響を受けてる
- ここは研究しようっていう感じで取り組んで、同時にゴーギャンとか好きだから西洋美術で陰影法って言って
古典的な絵画、彫刻とか見ながらこういうポーズを取ったりとかそういう風な事をしてた
こういうやり方で個性を作っていく
- そういう感じで研究していって作り上げたのが「ジョジョの奇妙な冒険」っていう漫画の絵
- 当時の漫画で、すごい画期的だと思ったのがこの車田先生
(「リングにかけろ!」に登場する必殺技”ギャラクティカマグナム”の1コマがスクリーンに大写しに)
(会場笑)
これはね、すごい評価してる。
パッと見て車田先生だって分かる所と、ストーリーが極端にシンプル化してくっていうか、単純化してくっていう
何処まで極限に単純化して描いているのか
- こういう表もちょっと作ってきたんですけど
こういう事考えるっつーのは僕だけなんで、他の漫画家さんは考えてないと思います
(おぉーっ!という声があがる)

*自分の席から見えた範囲のみ
- 何でこんな事考えるかっていうと
例えば、将来学校の先生になるって決めたとして、どんな学校の先生になるのかでちょっと違うと思う
消防士になるとしても、志が違うとちょっと違うものですよね
それを見るための物っていうのが漫画を描く時に絶対に必要だと思う
これは自分の漫画が何処にいるかっていうのを見る為の地図
- 古典的な手法で描こうとしている、リアリティを追求しているような漫画(図の左)
「あしたのジョー」
「北斗の拳」
「ろくでなしブルース」
「バガボンド」
「カムイ伝」
「星野之宣」とか
- 逆にこっち側って言うのは表現主義的な感じ(図の右)
マークとかさっき言ったように記号みたいな物をパッと見て分かる物、簡単な物をデザインする
「ドラえもん」
「ミッキーマウス」
「サザエさん」とか傑作ですよね。
- 「仮面ライダー」のデザインとかっていうのが、こっちに行くとアニメになりやすい(図の右上)
アニメになりたいっていうのはこっちを目指すといいと思う
漫画とか記号、ファンタジーを目指してる。
- 上の方って言うのは心の内面とか感情を材料にしようとしているもの
- 下の逆の対極って言うのはストーリーとか物語の構築に重きを置いてるサスペンスとか、自分の世界観を作り上げようとしている人達
「バスタード」
「アキラ」
「コブラ」
「ゲゲゲの鬼太郎」とか
この辺の漫画達は、こういうのは僕が目指してる
- これは僕が考えたので異論はあると思うんですけど、
でもこういう感じで自分って何処にいるんだろうなって言うのを考えないと
こっち行ったりこっち行ったり、で漫画家になったけど何を描きたいんだろうなって
編集部の人に何描きたいんですかって逆に聞く漫画家がいるらしい
そういう風になっちゃうんですね
- こういうのを作って自分は何処にいるんだろうって言うのを見る為の資料
ジョジョは多分この辺にいるんじゃないかな(図の左下にジョジョを書き足す)
古典的な手法で描こうとして、リアリティとか追求するけどストーリー性の方が自分の内面な感情を描こうとしたりしてないって言うか、主人公の運命とかを描こうとしている感じがあるので僕はこっちの方だろうなと、僕は考えてるんですね
- 当時スゲーなって思ったのが
「リングにかけろ!」と「キャプテン翼」が極端に劇画を単純化していって、ストーリーとかもかなり単純な方向に持って行くから、漫画誌に於いてはチョー凄い傑作だと思う
- この辺っていうのはオーソドックスって言うか正攻法(図の左上)
「バガボンド」
「ろくでなしブルース」
- 「ハチミツとクローバー」とか「ワンピース」っていうのはその内面とかを追いながらデザインとかもチョー優れてて、傑作
- こういう風なのを漫画家を目指す人っていうのはこっちに行こうか、こっちに行こうかっていうのを
やんなきゃいけないっていうか、そう思うんです
- (ジョジョは)古典的な手法でそういうリアリティとかそういうのを作ろうとした
- 謎にすごく興味があって、謎をテーマに漫画描いていこうと
- 超能力をどうやって描いたらいいんだろうな
エネルギーって絵に出来ないかなぁ、って考えて
それで「波紋っていう波みたいなもので行こうか」
- 石の上とかにも波紋が出来て鉄の上とか硬い物でも波紋っていうのを描いて行こうかって言うのが、まず第一期
- その次に「ジョジョの第二部も終わりそうだし、新しい必殺技を出さなきゃダメだよ」って編集部に言われて
(会場笑)
「うーん・・・」って考えたのは、「守護霊みたいなのが出て来て、割りに行きゃいいじゃないですか」
(会場笑)
「後から出て来て、それが行って割るんですよ」って言ったら
「えぇーっ!!」とかって言って「何だそれ?」って感じなんですよ。
「そんなの分かんねぇなぁ」みたいな。
「でもそれしかないんで描いてみますよ。そういう概念なんですよ。名前は側に立つからスタンド・バイ・ミーみたいな感じでスタンドにします」
- 昔って本当に休みとか無い
ジョジョの第一部が終わっても、翌週から第二部やってねって感じ
「来週から第二部だからね」って、「第二部第三部」だよ。
「終わったばっかりなのにキャラクターもいないっすよ」って感じで
(会場笑)
- 「じゃあ、そのスタンドで行きますよ。でも訳分かんないからダメじゃねぇかなぁ」とかって反対してる訳です
当時の担当、さっきの180cmの、袋から出した途端にけなし始める人なんですけど
- とにかくでも追い詰められてるからそういう感じで
承太郎っていう、時代は現代だからそういう風にしようっていう事で
血統はもう決まってたから
主人公の血筋は決まってたから、その辺はちょっと楽だったかも知れないですけど
スタンドって言うのを出して闘おうと。
- 当時、トーナメント方式の闘い方のストーリー進行の漫画が凄い流行ってて
それって、でもバブル経済と同じで頂点に行ったらその後どうなるんですか?
崩壊するんじゃないんですか?って感じだった
- ちょっとそういうのに疑問があって
ロールプレイングみたいに、双六みたいにその場その場で戦っていくようにしよう、っていう風に考えた
それが旅行のように、シンガポールで戦ってインドで戦ってってどんどんエジプトまで行くっていうストーリー展開
- 超能力をどういう風に絵にしようっていうのと
そこで出来上がったのが、スタンドっていうので構成されてる一連の「ジョジョの奇妙な冒険」のメインテーマ
そういう風に考えてってジョジョっていうのが出来てった訳です
- ストーリー構成って言うのは、サスペンスが主題で古典的な手法で
リアリティっていうか、スタンドってファンタジーだと思うんですけど僕はリアリティを追及しているんですね。
そのリアリティを追求して、心の中のパワーの表現っていうのをテーマに描いているっていうか、それが「ジョジョの奇妙な冒険」っていう主題っていう感じなんですね
学生との対談形式に移る
- Q.少年時代の話になるんですけども、漫画家になるに当たって熱中したことは?
A.漫画とかやっぱり映画とか
コレクションとか全然しない
集めたりとか、立体で作ったりもしない
プラモデルとか
とにかく絵を描くのが好き
- Q.少年時代からの映画を観たりとか、小説を読んだりって言う所から今の漫画のアイデアが出たりするんでしょうか?
A.物事を成し遂げる時は先輩を尊敬するのが一番近い道
先輩といってもレオナルド・ダヴィンチから始まったりする
そういうのが大切なんじゃないかと思うんです。
それは身についたというか発見したもので、学んでいくっていうんですかね、そういう姿勢
- Q.少年時代に好きだった漫画は?
A.僕が好きだったのは梶原一騎っていう原作者
「明日のジョー」とか「巨人の星」とか「空手バカ一代」とか、ああいうスポーツ根性モノ
一番凄かったは「愛と誠」っていう漫画
主人公の誠がナイフをで刺されるシーンがあって、次号で終わるんだけど、
そこがお正月の合併号が入って2週間空くんですよね。
あん時がね、とにかく早く本屋が開かないかなぁ、みたいな。
あれはちょっと凄かったです。
(会場笑)
- Q.図工の時間みたいな美術とかそういった所での絵を描くのは得意だったんですか?
A.あ、と、とりあえず(笑)
親には内緒だった所はあるんですけど凄い好きでした
写生行ったりとか
あんまり言ってないんですけど、文部賞とかに絵を選ばれたりとか
- Q.故郷が仙台市という事で、漫画の中でもM県S市の杜王町・・・
(会場笑)
それは子供の頃の仙台市の様子と被っていたりするんでしょうか?
A.当時、(仙台は)僕が子供の時っていうのは古い町だったんですね。
だけど1980年代になってから新しい家がどんどん建ち始めて、知らない人が住み始めてるっていうんですか
家は凄い綺麗なんだけど、知らない人だから不気味なんですね。
どっから来た人なんだろうなって、そういう人たちがいっぱいいた新興住宅地みたいなのがあって
そこがちょっと怖かったんですね。
その体験が杜王町っていう町で・・・ま、殺人鬼はいないと思います
(会場笑)
そういう舞台だったんですね。
自分の町は大好きで、逆の愛っていうんですかね。
そいうのを描いたつもりなんですけど。
でも、実名出すと、怒られそうだったから(笑)
杜王町って代えました。
- Q.コミックスの帯の部分のコメントで、おじいさんとの思い出っていうのが書いてあるんですけど
それはジョースターの一族の血統の話は一部毎に一代ずつ飛んでる
そういう所から来てるんでしょうか?
A.かもしれないですね。
(会場笑)
兄弟がいると田舎に預けられるんですよ。
おじいさんとは子供の頃はよく遊んで、何か作るのがうまかった
防空壕とか探検に連れて行ってもらったり
そういうのが凄い楽しかったです。
だからだと思うんですけど。
- Q.中学校から部活とかで熱中した物は変わって来た?
A.「俺は鉄平」って剣道の漫画があるんですけど、それ読んで剣道部に入りました。
(会場笑)
- Q.どこまでされてたんですか?
A.中学校
- Q.勉強とかはどうだったんでしょうか?
A.試験勉強の前とかまで漫画描いてましたから、そんなに良い訳無いって言うか(笑)
落第はしてないんですけど、はい
- Q.失礼だと思うんですが恋愛とかは?
A.僕は男子校だったけど大丈夫ですよ(笑)
(会場笑)
彼女いましたよ。
あんまり言うと、現在の人間関係にちょっと支障をきたしますんですいませんけど。(笑)
(会場爆笑)
- Q.司会:
漫画家になろうと意識し始めたのは?
A.小学校の時に、凄く褒めてくれるた友人がいたんですね。
「この絵頂戴」とかファン第一号っていう感じで
その時に漫画家になろうって思ったんですよね
なるって決めちゃいましたね
- Q.毎回主人公が代わるジョジョってそれぞれ個性があると思うんですよ
それぞれのジョジョのモデルっていらっしゃるんですか?
A.モデルは、ちょっといないかな
昔は筋肉を最初、隆々としてたんですけど、あれは当時シルベスタ・スタローンとか
アーノルド・シュワルツェネッガーとかっていう筋肉の映画が凄い流行ってたんです
(会場笑)
「ターミネーター」とか、そういうのが80年代に流行ってたんで、それとかの影響かな
第一部、描くじゃないですか、そうすると描いてない部分が出てくるんですよ
こういうのを描いたけど、例えば明るい性格を描いてないな、とか
そうすると第二部でちょっと明るいヤツにしてみたりとか
真面目過ぎたなとかってちょっと反省して、ふざけたヤツに
(会場笑)
クリント・イーストウッドは監督さんに「走るな」って言われたらしい。
アクション俳優だけど「お前はアクションするな」
「立ってて銃を撃て」
そのアドバイスって凄いなって思って
承太郎はあんまり動かさないっていうか、どっしり構えて寡黙に肝心な時だけ行く
とにかくスタンドは早い
(会場爆笑)
そういう感じで作ったヤツなんですね
- Q.6部の最後に登場するアイリンというキャラは、ゴージャス・アイリンと何か関係があるんでしょうか?
A.一応、遊び心ってだけで深い意味はありません(笑)
- Q.第三部以降、最後の敵っていうのは、何らかの関係で”時”が絡んでたりすると思うんですけど
時の概念について何か思い入れがあったりするんでしょうか?
A.一番強い技ってのは何なのかなって考えた時に、時間って言うのは不思議じゃないですか。
止まったりとか過去に戻ったりとか、未来はどうなってんのか、とか。
もしそれを支配できるヤツがいたとしたら無敵だろうなって思って
主人公は絶対勝てないだろうなって、そういう風に思わせたいっていうか
主人公どうやって勝つんだろうな、そういう所なんですよね
物理的な物を支配するのは大体強いですよね
重力だとか、そういうものを自由に出来る人っていうのは
そういうものを描けたのはスタンドっていう表現の方法なのかなと思いました
- Q.第二部のジョセフ・ジョースターについて
ジョジョのジョースター家の特徴という所に、”短命で生涯一人の女性しか愛さない”・・・
(会場笑)
ジョセフだけ長生きで女好きなのは何故?
A.あれは当然三部で終わる話だったんだけど(笑)
だけど四部描かなきゃならないじゃないですか
主人公いないんすよ!もう!
(会場笑)
近未来だったらいいけど未来過ぎると分かんないのね
近未来にしたいんだけど、そうすっと年齢とか合わないしさぁ、じゃあちょっと・・・
(会場笑)
愛人しかいないかな
(会場爆笑&拍手)
- Q.何でジョースター家という一つの家系だけで話を描いて行こうと決意なさったんですか?
A.血筋だとか自分は誰から産まれたのかな、とか
お父さんとかおじいさん位までは分かるけど
その前の前とか、その前の前の前・・・とかその人達ってどんな人たちなんだろうな、とか
考えると不思議になってくる
そこもちょっとミステリー、謎だと思うんですけどそういう部分ですか。
不思議な感じっていうんですか、でもなんかこう
誇り高い気分というか、そういう気分になるんですね
そういう所ですね
例えばさっきの愛人とかで産まれた人とかもいるかもしれないけど、そういう人達も血筋はある訳で、
そういうのを大切にしようっていうか
さっきも言ったけど、子供とかの時の体験って言うのは今になってもすごい思い出したりする
そういう生い立ちだとか、そういうのをキャラクターに絶対いるっていうか
DIOはどういう人生を送ったんだろうなとか、悪役に関してでも、そのお父さんはどんな人だったんだろうな、とか
そういうの知りたいんですね
描いてて
そういう事なんです
- Q.荒木先生にとって漫画を一言で表すと何になりますか?
A.えー・・・一言ですか?
心の救いっていう感じで。(笑)
無かったらちょっとホントね、ヤバイと思うんですよね
すごい重要だと思うんですよ
だから、ここに来たっていうのもそういう意味があって
中学生にこの熱い気持ちを伝えたい、少しでも、そういう感じなんですけど
-
Q.スタンドに洋楽の関係の名前を付けるのは趣味とかでしょうか?
A.単なる趣味で、うちの母親がロックとか聴いてると「流行りの歌はダメだ」って言うんですよ。
「普遍性がない」みたいな
でも、それちょっと違うんじゃないかなって
クラシックだって昔流行ってた歌で、今残ってるんだから、別にくだらなくても将来残るかもしれない
ロックのアーティストに対する尊敬の念とオマージュって感じで使わせてもらってるって言うか
でも、もう最近ちょっとバンドの名前がなくなって来ちゃって
(会場爆笑)
ちょっとヤバイですね。
-
Q.「オラオラ」とか「WRYYYYYY」とか変わった擬音だとか、変わったポーズとかそういうのが出てくるんですが
それを毎回考えるのはどうやって?
A.それはやっぱりロックの、ロック音楽っていうかミュージックの影響ですね
そういう風なリズムがあるんですね
最近は「SOUL'd OUT」*っていうバンドがいるんですけど
ジョジョを彼達がちょっと好きで、歌詞に、”オッオッオッオッ”とかあるんですよ。(笑)
あの辺も逆にジョジョの影響を受けてるって言ってましたけど
ロックから影響を受けて、ロックにまた、ロックっていうか音楽に戻っている(?)
っていう所がちょっと嬉しいかなぁっていうか不思議だなぁっていうか
すごいそういう感じですね。
*荒木先生のファンで対談やジャケットイラストを依頼した事も
- Q.始めの頃と6部とかと絵の描き方が全然違っているんですけども、自分ではどう思っていますか?
A.さっきも言ったように古典的な手法で描こうとしてて、そういう所を追求してるんで、同じになんないっていうか
どんどん変わっていかなくちゃいけないんだろうなって思ってるだけで前の絵にはこだわっていない
その辺が読者は混乱するかもしれないんですけど、ちょっと許してもらいたいかなって思うんですよ
- Q.新人賞に応募してくる人達を歓迎会とかで見かけたりとかするとどう思われますか?
A.まず、顔と絵が一致しない人間が多い(笑)
どの漫画書いた人だっけな?とかってあって、そういうのが第一印象ですけど
でも頑張って欲しいなって思うんです
一番最初に、新人賞に行った時に
秋本先生から「頑張ってくださいね」って言われたんですよ
あと車田先生とかが「最後のコマがちょっと泣けたよ」とかって言ってくれたんですね、一言
それがなんかすごい励みになってっていうか
だから、僕もちゃんと真面目に読んでちゃんと批評しようと思ってます
- Q.短編集にも岸辺露伴とか、吉良吉影のその後*っていうのが
あると思うんですけど、そういうのを描く事にしたのは何かあるんでしょうか?
*どちらも「死刑執行中脱獄進行中」に収録
A.やっぱりその人達、この後どうしたんだろうなとか気になったりとか
ファンレターとかでも「また出してください」とかよく言われるんですけど
あんまり出したくないんですよね
そこでもう終わりなんですね
例えば「バオー来訪者」とかって漫画はちょっと読んだ人はあんまり居ないと思うんですけど(笑)
ラストが続きそうな感じで終わるんですけど、あの感じがいいんですよね
(会場笑)
自分としては描き切ってるから、描きたくないんです。
だけどファンレターで「描いてください」とか催促されるんで
ちょっとはあの辺で付け足して満足してもらおうと、そういう事です。
- Q.ジョセフ・ジョースターはファンレターで出してくださいって要望があったんでしょうか?
A.ジョセフ・ジョースターは長生きだから居るじゃないですか?
(会場笑)
ちょっと年取ったんですけど、死んでないんで出て来ました。(笑)
- Q.尊敬する人とか恩師とかはいらっしゃいますか?
A.えー恩師?
恩師って実在の?
(会場笑)
実生活ですか?
影響受けた人はさっき言ったような漫画家の先輩達は鉄板ですね
恩師って言うあれでもないんですけど
学校の美術の先生とか、その人たちに絵はこうやって観るんだよって教えてもらったりとか
そういうのはすごい勉強になりましたね
あとは編集者の各担当
編集者の担当って、ゴルフのキャディーみたいな感じなんですね
こっち打ったらとか、あと何メートルあるよとか、ちゃんと教えてくれる
客観的に教えてくれる人なんで、すごいパートナーっていう存在なんです
だからそういうのはすごいありがたい事ですけど
だから、漫画家になりたい人はとにかく編集者と仲良くしなきゃダメなんですね。
”あいつは俺の漫画分からない”とかって思っちゃダメなんですね。
その辺はちょっと、すごくパートナーみたいな物は大切にしてもらいたいと思うんですね。
- Q.今の編集者の人とは仲がいいんですか?
A.えぇ、まぁ、とりあえず。(笑)
- Q.さっきは漫画を一言で表してもらったので、今度はジョジョを一言で表してください。
A.ジョジョはやっぱり人間の謎みたいな物を描きたいんですよね。
なんでこんな事をするんだろうっていう人いるじゃないですか?
それですよね。
それって、永遠のテーマなのかもしんないです。
描きたい事は一杯あります。
- Q.人間賛歌?
A.人間賛歌です。(笑)
それをね、悪い風に観ちゃダメなんですよ
素晴らしいんだよっていう気持ちで気持ちで接するんです
犯罪を犯した人でもその存在は何か意味があるんじゃないかって考えるんです
そういう風に観て下さい
- 司会
荒木先生はこれからもずっと漫画を描き続けると思いますので、皆さん応援よろしくお願いします
(拍手のなか荒木先生退場)
前の講演の関係で講演時間が短縮されるとの事でしたが、結局時間延長されてよかったです。
個人的には一般からの質問やサインなども貰えると嬉しかったのですが、これだけ大人数だと収拾がつかず無理ですね。
とにかく生の荒木先生の講演が聴けて大満足でした。
3.大槻義彦(早稲田大学名誉教授)「超能力よりおもしろい物理科学の神秘」
第三部の大槻教授の講演を聞くため移動。
移動中、グラビアアイドルの夏川純さんの講演場所が変更になったとかで、校内が多少混乱していた。
大槻教授の講演場所へ入ると一般の人は少なめで学生が多数来ていた。
TVと違って落ち着いた語り口でちょっと意外。
火の玉研究からTVで取り上げられるようになって、超能力者や霊能力者との対決などの裏話を語ってくれて面白かったです。講義時間数分前にキッチリ終わるところも流石物理学者という所でしょうか。
残りの数分で質問を受け付けた時に、中学生が「細○○子の事はどう思いますか?」と質問してからTVで見るような普段の教授になってヒートアップ(笑)
- 間違いなくインチキであります
- 私は70になるのを待っていた
- 彼女を批判すると歌舞伎町の893が出てくる
- 70過ぎたらいつ死んでもいい
- かつて、宜保愛子を叩いたので、次は○木
- 細○を支援している学者もインチキ
- 年末のTVで超能力女学生との対決裏話
TV局のプロデューサーから直にやらせを持ちかけられ断った
数分のはずが大いに盛り上がってました(笑)
4.旅の終わり
会場を出ると他の講演は終わっていたようで人もまばら。
廊下にいた学生が「急に寂しくなったね」と友達と話していたのが印象深かった。
校舎を出て帰ろうとすると、校門近くの広場にタクシーが止まっていて、ちょっと騒がしくなっていた。
見に行くと、ちょうど丸山弁護士が出て来てタクシーに乗り込む所だった。
すると「丸山弁護士!丸山弁護士!」と叫びながらタクシーの窓をガンガン叩く男が二人。
丸山弁護士はタクシーの中で苦笑いしつつ頭を下げて去って行った。
帰りのバスまで時間があったので、銭湯に行ったり名古屋城を見に行ったり夕食を採ったりして時間を潰す。

帰りもハーヴェストに運ばれて東京へ(ドドドドド・・・)
名古屋まで行くかどうか直前まで迷ってましたが、貴重な体験が出来て行って良かったと思いました。